講演会の記録を残すため写真を撮りに行った。

デジ一眼は持っていないので、自動露出、自動焦点のフィルムカメラに望遠レンズを付けて構えた。

フレームを決めてシャッターを押すだけなのだが、一枚二枚三枚と撮るにつれて、これは違うと思うようになった。

道具であるカメラを通して、被写体を見ているのだが、その人の何を撮ろうとしているのか、その時点になってわからなくなってきた。

笑っているところを写すのか、怒っているところを撮るのか。
そもそも何を話しに来ているのだったか。

もっとそばに行って、話の中身に近づかないと、何をどう撮っていいのかわからない。

岩合光昭プロが、猫の写真を撮るときは、まずそばに行って挨拶をしてから、と語っていた。

講演をしていたのは、無論「我が輩は猫である」先生ではないので、今さら挨拶に行くわけにも行かず、仕方なくカメラをしまい、お話を聞いて帰ってきた。

ファインダーの中で目があってもシャッターを切ったり切らなかったり、それが出来るのが写真家なんだろうな、とちょっとわかったつもり。

ポートレートはそばに行かなくては。